06猫の慢性腎臓病

慢性腎臓病
(Chronic kidney disease; CKD)とは

  • 機能的または構造的な腎障害が長期間持続している状態を指します。
  • 高齢の猫でよく見られ、10歳以上では約30〜40%が罹患、5歳以上の猫の死因第1位と報告されています1)
  • 腎機能マーカーと最も相関する病理学的所見は、尿細管間質の線維化です2),3)
  • 間質の線維化は血流減少、低酸素および炎症と悪循環を形成し、慢性腎臓病は不可逆的に進行していきます4),5)

腎臓の構造の変化

組織像(HE染色※)

健常猫の腎臓

CKD罹患猫の腎臓

尿細管間質の線維化および
炎症が多くの猫に認められます。
※HE染色:ヘマトキシリン・エオジン染色
岩手大学 農学部 獣医病理学研究室 落合謙爾教授より

透過型電子顕微鏡像

正常な腎臓(ラット)

腎炎誘発モデル(ラット)

毛細血管網の顕著な減少が認められます。
Reprinted from Prostaglandins & other Lipid Mediators 112, Yasufumi Goto, Shinichi Yamaguchi, Mitsutaka Tamura, Hidenori Mochizuki, Hajimu Kurumatani, Kiyoshi Okano, Mitsuko Miyamoto, A prostacyclin analog prevents the regression of renal microvascular network by inhibiting mitochondria-dependent apoptosis in the kidney of rat progressive glomerulonephritis, 16-26., Copyright (2014 Aug), with permission from Elsevier.

腎機能の変化

  • 糸球体濾過量の減少
  • 尿濃縮力の低下
  • 電解質調整能力の低下
  • ホルモン分泌能力の低下など

腎組織の約70%が障害されると、臨床症状(食欲不振、体重減少、元気減退、多飲多尿など)や検査値の異常があらわれます。

検査項目

血液検査
・ 血清クレアチニン ・ 血中尿素窒素(BUN)
尿検査
・ 尿中蛋白/クレアチニン比(UPC) ・ 尿比重
その他の検査
・ 血圧測定 ・ 超音波検査

など

これらの検査と病歴および身体検査などを総合して診断を行います。

参考文献

  1. 1)Sparkes AH, et al. J Feline Med Surg 2016; 18: 219-239.
  2. 2)Chakrabarti S, et al. Vet Pathol 2013; 50: 147-55
  3. 3)Yabuki A, et al. Res Vet Sci 2010; 88: 294-299
  4. 4)Nangaku M. J Am Soc Nephrol 2005; 17: 17-25.
  5. 5)Fine LG and Norman JT. Kidney Int 2008; 74: 867-872.